活用事例
日本の特別天然記念物 オオサンショウウオを3Dデータ化
撮影装置:phoenix v│tome│x C450
試料寸法:731 × 220 × 77 mm
試料材質:生物(両生類)
スキャン時間:20分(5分×4スキャン)
ボクセルサイズ:139μm
長辺が731mmとCTスキャンの対象としては最大級の大きさであったことから、マルチスキャン(分割してスキャンを行い後からマージする機能)によって最大1m程度まで対応可能なミリフォーカスCT phoenix v|tome|x C450を使用しました。
オオサンショウウオは解凍された状態だと体が柔らかいため、CTスキャン中に動いてしまわないよう、十分に治具に固定してスキャンが実施されました。
水分を含んだオオサンショウウオの体は、長時間CT装置内に設置すると乾燥によって徐々に形状が変わってしまいます。今回のように4分割のマルチスキャンを行う場合は通常よりもスキャン時間を要するため、品質が低下しない範囲でスキャン時間を短く設定することで、形状変化によるモーションアーチファクトの発生を防いでいます。
両生類の内臓は、その周辺組織とX線の透過率が非常に近いため、今回の撮影条件ではコントラスト差がほとんど得られず判別困難でした。しかし、オオサンショウウオが死亡直前に捕食したと思われる生物の痕跡が消化管内部に残っていることを観察することができました。判別できた範囲では、甲殻類の爪の形状やカエルの両足の骨などが見てとれます。
CTスキャンデータは、専用ソフトウェアで閲覧可能なボリュームデータとして保存されますが、今回は学校での学習利用や施設での展示などといった幅広いデータの利用を目的とした取り組みでしたので、3Dデータの中間ファイルとして一般的なSTL形式に変換しています。STLデータは、光造形方式の3Dプリンターで利用することを目的として20年以上前に開発されましたが、現在でも3Dプリンターに入力するデータ形式として最も多く使用されています。
宇佐市内の高校では、今回制作したSTLデータを使用してオオサンショウウオの3Dプリントを行う取り組みが開始されており、今後さらにデータの活用が広がることが期待されます。