医療用CTと産業用CTの違い
X線CTスキャナは「医療用」と「産業用」に分類されますが、この二つは用途の違いから大きく設計が異なっています。
医療用CTスキャナは、生体を撮影するため被曝線量を抑えることが最も重要であり、また、生体のブレを抑えるためにX線管と検出器が生体の周りを回転します。高い線量を使って極めて短い時間で撮影を行います。
一方、産業用CTスキャナは工業製品を撮影するために被曝線量を抑える必要がなく、X線管と検出器が固定された代わりに製品を設置した回転台が動き、低い線量で長時間の撮影を行います。このため、産業用CTスキャナは高精度・低ノイズの高品質なデータを得ることが出来、工業製品の品質検査や開発材料の評価、他社製品のリバースエンジニアリングなど、さまざまな用途で利用されています。
産業用CT業界について
産業用X線CTスキャナの製造・販売を国内で行っている代表的な企業としては、日本ベーカーヒューズ株式会社(旧GE)、エクスロン・インターナショナル株式会社、ヤマト科学株式会社、テスコ株式会社、カールツァイス株式会社、株式会社 島津製作所、株式会社 東芝、株式会社東陽テクニカ、オムロン株式会社、株式会社ニコン、株式会社 日立製作所などが挙げられます。産業用CTスキャナによる検査・測定を行うには、まず、これらの企業からCTスキャナを購入する方法がありますが、産業用CTスキャナの価格は数千万から数億円程度と非常に高額であるため、自動車や電気機器などのハイテク産業を除いて、参入障壁が高いものとなっています。
このためCTスキャナによる検査・測定を行う場合には、受託サービスを行なっている国内の企業に依頼するか、大学などの研究機関や都道府県の工業試験場・産業技術センターに依頼するのが一般的です。